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<中華航空事故20年>ハイテク機の「監視」 葛藤続く操縦士
毎日新聞 4月26日(土)13時0分配信
名古屋空港で台湾国際空港発の中華航空140便(エアバス社製A300-600R型機)が着陸に失敗し、乗客・乗員計264人が犠牲となった中華航空機墜落事故(1994年4月)から20年を迎えた。着陸時に自動操縦(オートパイロット)装置とパイロットの判断が対立した結果、墜落を招いたとされる事故の教訓は重い。人間は、どう機械と向き合ったらいいのか。模索は続いている。
「自分は航空機のシステムを十分に理解できているのだろうか」。米ボーイング社製のB777のコックピットで、全日空の男性機長はしばしば自問してきた。過去4機種に乗務し、操縦歴30年以上のベテランだが、それでもめまぐるしい技術の変化は骨身に応える。「今のハイテク機の操縦は、コンピューターを操作するようなものですよ」
A380のコックピット
ボーイング777のコックピット
機長は3年ほど前まで、欧州エアバス社製のA320を操縦していた。ボーイング機とエアバス機の設計思想は根本的に異なる。一目瞭然なのはコックピットだ。ボーイングは旧来型の操縦輪(コントロールホイール)、エアバスは操縦席横のサイドスティックを採用。また、ライトを点灯させる動作一つをとっても、ボーイングはスイッチを「押す」が、エアバスは「引く」といった具合だ。ただし、機長は気にしないという。「その点は、慣れるかどうかの問題」と自信を見せた。
ボーイングは人間を優先し、エアバスは機械を優先する--。世界2大航空機メーカーの思想の違いはしばしば、そんなふうに語られてきた。
例えば、前述の操縦装置について、ボーイングはパイロットの感覚を重視する。操縦輪の操作に機体はダイレクトに反応し、重い、軽いなどの手応えをパイロットも感じる仕組みになっている。B777などのハイテク機は、「フライ・バイ・ワイヤ」という電気信号による操縦システムを採用しており、操縦輪を握る手に重みをわざと生じさせた擬似感覚だ。
対するエアバスのサイドスティックは、純粋に電気信号の入力装置にすぎない。どのような飛行をしたいのかを入力すれば、コンピューターが最適の旋回、加速などの機体制御をしてくれる。
操縦輪は航空機の誕生からあり、セスナなどの小型機が採用するなど、パイロットとの親和性が高い。一方で、サイドスティックにすると操縦席の手前に余裕ができ、パソコンのキーボードに入力するなどの作業がやりやすくなる利点もある。
自動操縦については、ボーイングは操縦士が手動操作をすれば解除されるシステムをとってきた。中華航空機事故もあり、現在のエアバスも同様のシステムを採用している。
ただし、その際もボーイングはパイロットの意思を尊重して失速などの恐れがあれば警報装置を作動させ、パイロットに他の操作をするようにうながす。これに対し、エアバスはそもそも失速などの恐れがある操作は受け付けない。システムが安全と判断した操縦限界の中で、パイロットは操作できる。
「どちらが優れているか、という比較論ではない」と航空関係者は声をそろえる。
「機械は故障するかもしれない。だが、人間もパニックに陥って誤った判断を下す可能性がある」。数々の航空機事故の原因を研究してきた東大名誉教授の加藤寛一郎氏(78)は指摘する。「航空機事故の7割がヒューマンエラーによるもの。人間を補佐するため、今後も自動化はますます進むだろう。パイロットの教育のあり方が重要になっている」
「RADDR(レイダー)」--。パイロットのなすべき動作として、そんな造語があるという。「発見する」「解析する」「立案する」「決定する」「チェックする」の動作を表す五つの英語の頭文字を並べている。
「正確に情報を読み取り、正確な判断を下すこと。それがパイロットの役目」と、全日空の男性機長は語った。「危険を回避できる技量は大切だが、危険な状況に陥らせないことが重要です。パイロットは航空機というシステムの『監視者』であるべきです」 【高橋昌紀/デジタル報道センター】
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A300の名古屋での事故は、機体にGo Around(着陸復行)の指示が入った事により、Pitch Up しようととしたAuto Pilot と 着陸を継続しようとして Pitch Down の操作を行おうとしたパイロットとの相反する操作の結果、生じたものでした。
この事故は、事故事例の研究において、テネリフェのB747衝突事故と同じく、よく題材とされるものです。
パイロットは航空機のシステムの「監視者」というのは、確かにその通りだと思います。ただし、具体的にどのようにして、監視するのかというのは、難しい技術だと思います。
サンフランシスコのアシアナ航空の事故については、Auto Thrust という自動的に出力を調整する機能が切られている事に、パイロットが気付かなかった事が原因でした。
いつもは、普通に動いているものが動いていない。。。
そういった状況に「気付く」力というのは、機体が高度にオートメーション化されれば、されるほど衰えてしまう。そういう矛盾があるように思います。
ある意味、車を想像してみると分かり易い気がします。
BMWの自動運転の実験
最近、自動車でも自動運転によって、目的にまでコンピューターと車体だけで走行する実験が行われています。
もし、10年間、まったく故障せずに自動運転で、自宅から最寄り駅まで運転できていたのに、ある日、とあるカーブでハンドルが動かなかった。。。そのような場合に、即座に対処できるでしょうか?
自動運転装置が故障した場合に、何が起こるのか?どのようにして対処するのか?乗っていた人は冷静に対処できる態勢を維持しているのか? など、多くの問題と対策の研究が必要であると思います。
自動化された機械と人間との関係は、本当に難しいものだと思います。