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産油国、「価格戦争」に突入=OPEC単独減産に限界〔深層探訪〕
時事通信 11月29日(土)8時33分配信
原油価格が下げ止まらない中、石油輸出国機構(OPEC)は27日の総会で生産目標を現行の日量3000万バレルに据え置いた。OPECは本来、価格の安定維持を目指し生産を調整する産油国カルテルのはず。しかし、増産が続く北米産のシェールオイルという強力なライバルが台頭する中、OPEC単独での減産もままならず、産油国は安値にどこまで耐えられるかを競い合う「価格戦争」への突入を余儀なくされた。価格が1バレル=100ドルを上回っていた、産油国にとって心地の良い時代は終わり、「石油市場の歴史で新たな章が始まった」(国際エネルギー機関=IEA)との見方も浮上する。
◇増産続くシェール
「供給過剰はOPECだけではなく、非OPEC産油国の大量生産によるものだ」。ナイジェリアのアリソンマドゥエケ石油相は総会前、記者団にこう語った。供給過剰の背景には、「シェール革命」で沸く北米産原油の増産がある。同相は「他の産油国の動向を見極める必要がある」と述べ、OPEC単独で減産することの限界を示唆した。
今や米国の産油量は、OPEC最大の産油国サウジアラビアをしのぐ。ナイジェリア産原油の得意先はかつて米国だったが、現在、米国は需要の大部分を国内産で賄う。
価格下落を受けた需要増加に応えられれば、負の影響は相殺できる。だが、長期にわたって石油関連投資を怠ってきたベネズエラの場合、増産余力はない。
100ドル台への価格回復を望むベネズエラのラミレス外相主導で、サウジと、非OPECの有力産油国ロシア、メキシコの石油相らが25日、ウィーンで会談した。しかし、4カ国は協調減産で合意するどころか、同席したロシア石油最大手ロスネフチのセチン最高経営責任者(CEO)は「現在の価格水準は危機的ではない」と、減産に否定的な見解を表明した。産油国間の価格戦争の号砲が鳴った瞬間だった。
結局OPEC総会では、市場動向を見守る意向を再三示したサウジが、減産を主張するベネズエラを押し切り、生産目標の据え置きが決まった。
英証券会社IGグループのアリスター・マッケイグ氏は「サウジは市場シェアの維持で満足なのだろう」と語る。総会後、ラミレス氏は記者団を振り切り、無言のままOPEC本部を後にした。
◇将来、再高騰も
歳入や外貨獲得の大部分を石油収入に依存するOPEC諸国は、原油安時代への適応を迫られている。独立系石油アナリストのマヌシェール・タキン氏は「原油安への対応は難しいが、OPEC諸国はかつて、もっと低い水準でもやっていけた。世界の終わりではない」と話す。
日本を含む消費国にとっては、原油安は実質収入の増加をもたらし、個人消費の活性化が期待される。だが、下落が続けば産油国における石油関連投資は抑えられ、将来、供給不足による価格の再高騰を招く恐れもある。IEAの主任エコノミスト、ファティ・ビロル氏は「現在の価格水準は消費者にとって快適だが、さほど長く続かないかもしれない」と警告する。(ウィーン時事)
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原油価格は、日本の経済に深く関係しています。
これは、原油が安くなれば、ガソリン価格が安くなる。。。などというレベルではなく、国家の存続に関る問題に繋がっています。
日本の国債発行残高は約780兆円です。
これだけの発行残高にもかかわらず、日本国債の信用度はきわめて高く、10年物の国債でも0.43%程度となっています。
これだけの信用を日本の国債が保っている理由は、
① 日本国債の大部分を日本国民・銀行が所有している。
② 日本の国際経常収支が黒字である。
上記の2つだといわれています。
一方、②の国際収支に目を向けると、原子力発電所の稼動停止による火力発電所のLNG(液化天然ガス)燃料の輸入量の増加によって、日本の国際収益力が低下しています。
液化天然ガスの輸入量の激増により、日本の貿易収支は赤字に転落しました。そのため国際経常収支は悪化を続けており、2013年度下期に至っては、経常収支までもが、赤字に転落しました。
この状況が続くと、国債の信用度の低下を招き、長期金利の上昇を招きます。
長期金利の上昇によって、何が起こるのでしょうか。
1 長期金利が上昇し、国債の償還費用が膨れ上がる。
2 本来、国家が投資すべき費用が圧迫され、日本の国力が低下する。
3 更に経常収支が悪化し、日本の信用力が低下する。
4 更なる長期金利の上昇を招く。
この負のループが極限まで進むと、ギリシャやかつての東南アジアのような経済危機に到ることになります。
つまり、経常収支の黒字を維持して、海外からの富を日本に流れ込ませるためには、貿易収支で莫大な赤字を産み出しているLNGの費用を圧縮することが必要となります。
このLNGですが、産出国が限られていることと、原油価格に連動して高騰していいたため、大変な高値となっていました。
更には、「日本はLNGを買わざるを得ない」と産出国に足元を見られることによって、アメリカで売買されているLNGの実に4倍の価格で輸入せざるを得ない状況でした。
これまでは、安定供給と引き換えに法外な高値での輸入を強制され続けてきました。原子力発電所の問題は執拗に報道するマスコミも、この問題については、何故かほとんど取り上げていません。
過去、ヨーロッパに原油とガスを供給していたロシア。アジアとアメリカに輸出していた中近東という構図がありました。互いの「シマ」を暗黙の了解で守っていました。
しかし、アメリカがシェール革命によって、原油の輸入量が激減したため、中近東がヨーロッパ向けの輸出を始めたことによって、世界の原油・LNGのシェア争いに大きな変化が生まれています。
この原油価格の下落を好機として、国家として安価で安定したエネルギー資源の確保に動いてもらいたいものです。